778a0aの日記

戦略シミュレーションゲーム開発、本の感想、ソフトウェア技術についてなど

betrayer2: 開発過程のまとめ

前回同様、「betrayer2」の開発過程をまとめておきます。ほぼ個人用のメモです。

おおまかには、

  • 2024年8月から開発を始めて、
  • 2024年11月に軍勢の移動処理や経済などゲームのコア部分を実装が終わり、
  • 半年間ぐらい中断があって、
  • 2025年5月から再開して各種アクションやUIの実装を進め、
  • 2025年10月頭ぐらいからテストプレイや細かなブラッシュアップを行って、
  • 2025年10月31日にリリース

という流れでした。

2024年8月 開発着手・マップ実装

7月に前作「betrayer」の英語版のリリースを終えて、8月から「betrayer2」の開発に取り掛かりました。

マップのヘックスタイルの実装や、城などのデータ構造の実装を進めました。

2024年8月頃の開発画面

(当時のメモ)
今月はタイルの作成と簡単なゲームループ・UIの実装まで。今回は色々独自仕様を入れようとしているので、面白くなるか不安・どう作ればいいか悩んで進みが悪い

(その他雑記)
  • 生活を朝型化しようとしてうまくいかず、色々効率の悪い時間の使い方をしている
  • 目標を宣言して自分を追い込むため、microblog.pubを建てて進捗を書き込むことを始める
    • しかしmicroblogの改造にハマってしまって一回休み
  • 無理な体重管理をしているのも相まってかなりやる気が出てなさそう
    • おかげで体重減少はそれなりに順調そう。ただ本末転倒
  • ゲームの無駄時間も多かった。太閤立志伝V DXをようやく遊んでいた

2024年9月~10月 軍勢実装・キャラ追加

基本的なアクションの実装や、軍勢の実装などを進めました。

EditorWindow(IMGUI)で編集機能を作って、城の配置やキャラのパラメーター調整を行っていました。初めて本格的にIMGUIを使いましたが、手軽に編集UIが作れて、GitHub Copilotの補完機能との相性も良くて便利でした。

EditorWindowの様子1

EditorWindowの様子2

また、勢力数が増えたので、登場キャラを増やすためにキャラ画像の生成・追加も行いました。前作では画像生成に無印版emiを使っていましたが、emi 2.0emi 2.5も試してみました(そのときの実験メモ)。結局無印版emiの生成結果が一番バリエーションに富んでて良い感じだったので、無印版emiを使ってキャラ画像を生成しました。

ただ、まだあんまり順調に進んだわけではなく、モチベ不足に苦しみながらなんとか開発を進めていました。(当時メモ

(その他雑記)
  • 9月頭にやる気の上がらない原因・問題点を整理している
    • (無茶な体重管理、無駄な英語記事閲覧、生活朝型化の難航等)
  • ただ結局太閤立志伝V DXに手を出して時間を無駄にする
    • 太閤立志伝Vはやっぱり面白い😭
  • 10月に入ってから徐々に開発に取り組めるようになる
  • 食事は省エネ状態にならないよう気をつけてかなり改善した
  • 運動と開発のバランスに苦慮している
  • 10月後半にまとまった時間が取れて、いい感じに進む
    • 実装が面白いところに差し掛かったからとメモに書いてあるけど、生活習慣の改善も大きい気がする
  • 年内リリースを目指してそれなりに進められた

2024年11月 AI実装

AIキャラの動作を一通り実装して、全自動でゲームを長時間進行させるのを何度も繰り返して、AIの思考の改善や軍勢・戦闘処理のバグ修正や内政のバランス調整などを行いました。

この月は割と順調に作業が進みました。

(その他雑記)
  • かなり順調
  • 無酸素運動を試している
  • ノイズキャンセリングイヤホンを付けて寝るとよく眠れるようになることに気付く
    • → 耳栓を買って着けて寝るようになる(かなりいい感じ)
  • 健康診断で色々数値が悪いのを見て気を引き締める
  • ツールづくりのためにBlazorを試す
  • オーディオブックで適当な本を読む
    • これはいいとも悪いとも言えなかった。忙しすぎる気がする。静かな時間も大事だと思った

2024年12月~2025年4月 進捗無し

(忙しかったので進捗はありませんでした)

(その他雑記)
  • ぼちぼちAIコーディングエージェントについて調べはじめる(Roo Code、Replit等)

2025年5月 再開・仕様簡略化

ようやく開発を再開しました。

元々お試しで「兵糧」「城安定度(治安)」「町建設」などの要素を実装していたのですが、あまりゲームの面白さに寄与しない感じだったので、削除してゲームの仕様を簡略化しました。(そのときのメモ)

この変更でだいぶん独自色が弱くなって、お手本の「NeoDeserter's PLUS」のゲーム性に近づいていきました。

(その他雑記)
  • 色々生活が崩れていたので立て直す
  • とはいえ食生活が終わっているのでまだ活力は全然無い
  • 気力が出ないので読書が多め
  • やる気が出ない原因、ゲーム開発の阻害要因をまとめているけど、栄養のことには触れられていない
    • 読書、本の自炊、ブログ投稿再開どうするか、運動、AI関連のお試し、情報収集などなど、色々気の散る要因が多い状況だった
  • 運動を久しぶりに再開したとのこと

2025年6月~8月 UI実装着手・地名付け

UIの実装を進めていきました。前作同様、UI Toolkit + Rosalinaで作っていきました。また、Claude Codeも本格的に利用しはじめました。Claude CodeはUI Toolkit + Rosalinaとの相性もバツグンで、かなり作業が捗りました。このあたりの話は別記事(後日投稿予定)の技術解説で詳しく紹介できればと思います。

前作より画面の数も複雑さもかなり増しましたが、Claude Codeに手伝ってもらったおかげでなんとか作り切ることができました。

Claude Codeに初めて作ってもらったUI(画像右側)
(かなり良い感じ)

7月まではあまり気分も乗らず進みが悪かったのですが、8月から生活習慣を改めて、ちゃんとした食事・睡眠・運動を心掛けるようにしたら、やる気も回復して開発が捗るようになりました。やっぱり健康的な生活は大事だと思いました。

(8月頃のメモ)
開発については、地名付けや行動画面のUIができてきて、だいぶん完成までの道筋が見えてきた。あとは各アクションのUIと処理を実装したら、AIやバランスの調整が主になっていきそう。9月中にほぼ完成まで持っていって、10月は仕上げやタイトル画面の作成などにしていきたい。

(その他雑記)
  • 6月はまだ栄養状態が悪くて低活力
  • また朝型化を試そうとする
    • これはエネルギー不足で夜にやる気が出ないことの裏返しだったんだと思い返して気付いた
  • 6月末からClaude Codeを本格的に使いだし、UI作成を進める
    • まだ画面構成は固まっていない。Claude Codeと一緒に探索的に画面を作っていった感じ
  • 7月はたぶん一番食事が終わっていた時期
    • なのでほとんど進捗無しで、成果はせいぜい読書程度。「不思議と本だけは読める」とのこと()
  • 8月頭にようやく栄養不足・運動不足が全ての活力不足の原因だと突き止める
    • 「ちゃんとした食事とか運動とか面倒だったけど、必要経費だったと分かった」
    • 意外とこういう必要経費は多いし、疎かにしてはいけないと分かった
      • 開発が本当に乗っているときは、睡眠とそれなりの食事さえ確保すれば何の工夫もなく開発を進められるけど、そんな状況は多くは訪れないし、長期的に持続可能でもない
      • 無駄に思えるけど、ちゃんと栄養ある食事を取り、しっかり運動に時間をかけて体を疲れさせて十分な睡眠を取ることが大事、という当たり前の事実を一度見失ってようやく取り戻せた
      • 運動も大事なことに改めて気づけたのも大きな進歩だった。9時から23時ぐらいまでぶっ続けで開発できればさすがに体も疲れて7時間ぐらい睡眠できるけど、そうでない普通の生活だと体が疲れてなくて6時間ぐらいしか眠れない。その睡眠量は頭の疲労回復には不十分なので、開発時間を削ってでも運動して体を疲れさせて睡眠時間を確保しないといけない
        • 今のところは7時間睡眠を心掛けている。7時間を下回ると自覚できるレベルでパフォーマンスが下がる。気を抜いて運動を怠るとすぐ6時間半睡眠とかになってしまうので、運動もしっかりしている。できれば7時間半睡眠を目指したいけど、それを実現できる運動時間の確保はだいぶん厳しそう
    • 夜なかなか開発する気が起きなくて、どうやって昔はあんなに開発できていたんだろう(その頃もモチベと戦いつつではあったと思うものの)と不思議で仕方なかったけど、ちゃんとした食事を取ると24時まで何の問題もなく開発できるようになった
  • 8月末時点で地名の検討、城情報パネルUI、目標選択UIなどを終わらせる
  • 10月になんとしてもリリースすると決意する

2025年9月 UIほぼ完成・ブラッシュアップ

10月のリリースを目標に設定して開発を進めていきました。

UIも粗方できてきて、ある程度遊べるようになってきたので、デバッグも兼ねたテストプレイを繰り返して、ひたすらUIやAIのブラッシュアップを行っていきました。

(9月頃のメモ)
ゲーム開発は、大方のアクション実装やUI実装が終わってきた。後はバランス調整や、細かなタスクの消化が主。バランス調整がどんな感じなのか、通しで遊べるのかなどまだ未知数なところがある。状況次第では大きく変更が必要になるリスクがあると思っている。

ともかく10月中のリリース目標は固持して、10月いっぱいまで頑張って取り組んでいきたい。

できれば10月の早い段階のリリースを目指していたけど、今の感じでは10月後半ぐらいまでかかりそう。できる限り前倒ししたい。ただ、納得の行く出来になるまで妥協はしたくない。どれだけ遅くても、10月いっぱいでけりをつけたい。

(その他雑記)
  • NeoDeserter's PLUSで遊ぶ
    • 忘れていたゲームの面白さの部分や、思い違いをしていた仕様などが色々見つかる
  • NeoDeserter's PLUSのプレイ感に近づけるように改造を行う
  • 去年から続けていた23時就寝の目標を放棄する
    • それだけ夜に気力が保てるようになってきたということ
    • とはいえ24時超えが続くと睡眠不足になるので23時半~24時半ぐらいには寝られるように心掛ける

2025年10月~ 最終調整・リリース

バランス調整や、欲しい機能の実装などをひたすら繰り返しました。

バランス調整、特にテストプレイが大変で、通しでプレイすると数時間はかかってしまうので、結局リリース前に2、3回ぐらいしかテストプレイはできませんでした。もう少し大きな規模のゲームになると、必要なテストプレイ時間が大変なことになりそうだと思いました。

10月最終日になんとか納得のいく水準まで作り込めて、無事unityroomにてリリースできました。

おかげさまで前作よりも好評そうでunityroomの閲覧数の伸びもよく、11月14日時点では閲覧数2135、評価数2、コメント数8(作者返信4含む)でした。betrayer1をやりこんでくださった方々からの嬉しい要望コメントや感想コメントもいただけて良かったです。

テストプレイの様子(クリア画面)

また、betrayer1も改造して、ゲーム内に新作リリースのお知らせを追加したり、betrayer2のキャラが出てくるボーナスシナリオを追加したりしました。

今後について

次は「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のようなゲームを作ってみようと思います。また、コメントで頂いたbetrayer2の要望なども対応していこうと思います。

ただ、またしばらく時間が取れなくなりそうなので、いつできるかは分かりません...。5年掛かってでも作りたいとは思います。時間を見つけてコツコツ開発を続けていきます。

終わりに

前作の振り返り記事を見返して、「このゲームを作りはじめたときは、戦略シミュレーションゲームの作り方なんて皆目見当もつかず」と書かれているのを見て、ああそうだったんだと感慨深くなりました。あれから2本の習作を作ってきて、多少は戦略シミュレーションゲームの作り方を覚えられた気がします。

今回の開発ではClaude Codeにかなり助けられました。モチベが上がらないときや疲れ果てて頭が動かないときも、Claude Codeに実装をお願いしたら80点~95点ぐらいのコードを書いてくれ、それを手直ししているうちにモチベが復活してきて作業を進めて、また疲れたらClaude Codeにお願いして...、ということを繰り返して開発を進めました。開発終盤ではちょっとした雑用レベルの変更(特にUI周り)はほとんどClaude Codeに任せていたと思います。

また、前作は約3ヶ月程度の開発期間ということもあり、割と勢いで乗り切った感がありました。今作は開発期間も長くなり、特にゲームの仕様やUIの仕様を固められていない時期はなかなかモチベも上がらず苦しみました。

開発の終盤になって「開発のモチベの維持には十分な食事・運動・睡眠が大切」という極めて平凡かつ重要な秘訣に辿り着けたのは良かったです。ただ、結局やるべきことがある程度明確になってきたから開発が順調に進むようになっていただけかもしれませんが...。このあたりは次回作の開発で検証できればと思います。

開発の過程では、これほど素晴らしい創作物が溢れるこの世の中で、あえて自分がゲームを作る意味はあるのだろうかと疑問に思うこともありました。それでもなんとか作りきることができました。次回作の開発でも色々な迷いや困難にぶちあたるとは思いますが、また最後まで作りきれるといいなと思います。

以上です。

betrayer2: 戦略シミュレーションゲームの習作2をunityroomにてリリースしました

戦略シミュレーションゲームの習作第二弾「betrayer2」をunityroomにてリリースしました。去年の6月末にリリースした「betrayer」の後継作です。

以下のリンク先で遊べます。
https://unityroom.com/games/778a0a_strategy2

ソースコードは以下にあります。(MIT License)
https://github.com/778a0a/betrayer2

本記事では「betrayer2」のゲーム内容の概要を紹介します。

概要

「betrayer2」は「NeoDeserter's PLUS」という名作戦略シミュレーションをお手本として真似しつつ、独自の要素(外交、「国主」など)を色々追加してみた作品です。

ゲーム画面

前作同様、プレーヤーは君主や家臣、浪士など立場の違う様々な登場人物のなかから操作するキャラを一人選び、世界の統一を目指して戦っていく感じのゲームです。

前作からのアップデートとしては、

  1. マップがヘックス形式になり、城の人員配置の概念も追加されたため、より戦略性が増しました
  2. 内政の概念が追加され、戦闘以外の領国経営も楽しめるようになりました
    • 城が発展すると雇用可能なキャラ数が増え、動員兵力で他国より優位に立てます
  3. 登場キャラ数が前作の102人から199人に増え、それぞれが性格(マスクデータ)を持ち、それぞれの個性にあった行動をするようになりました

という感じです。

お手本の「NeoDeserter's PLUS」にない独自要素としては

  1. 外交の概念を追加しました
    • 他国と親善を行うことで、攻め込まれにくくなったり同盟を結んだりできます
    • 同盟国とは戦闘が起きないだけでなく、敵国から攻められているときに救援を出してくれることもあります
    • 逆に、外交を怠って周りの国を滅ぼしてばかりいると、隣接国との関係が悪化して四面楚歌になったりします
  2. 「国主」の概念を追加しました
    • 城主として功績を上げ、国が大きくなると「国主」に任命されます
    • 「国主」になると、自分の城だけでなく隣接する城にも命令が出せるようになります
  3. キャラに「特性」の概念を追加しました
    • 例えば「海賊」は大河や川での戦闘に強かったり、森の多い地方の出身者(「狩人」)は森での戦闘に強かったり、「商人」は戦闘には弱いけど、内政や投資の効果が大きかったり...

という感じです。

戦闘画面

「NeoDeserter's PLUS」と比べて城数が多いので、正直、中盤から終盤にかけて中だるみ感がややあるかもしれません(セレストあたりの手強い敵国が台頭していれば別ですが)。一応、勢力が大きくなると臣下の数が増えて、臣下たちに褒賞を与えて忠誠を保つことに忙殺されるので、直接自分で進軍の指示を出すのをやめて、「方針」を使って城主にうまく動いてもらうことが多くなり、ゲーム性がちょっと変わってきたりします。

臣下たちの忠誠を保っていないと、働きが悪くなり、命令を拒否され、最後には独立されたり反乱を起こされたりします。独立や反乱が起きると他の臣下の忠誠も下がるので、反乱が反乱を呼ぶ負のループに入って、最終的に国が瓦解していきます。(忠誠は100以上を保つのがおすすめです。90未満になると独立や反乱を起こされる可能性が出てきます)

独立した国主に寝返る城主の図

とはいえ君主プレイは操作量も多くて大変なので、まずはアーサーあたりの有能なキャラで始めて、しっかり内政を行って功績を上げて成り上がっていくプレイか、城主として君主を支えるプレイがおすすめです。

優秀な君主なら問題ないですが、そうでないと終盤は君主の采配Pの限界で反乱祭りが起きがちなので、城主や国主として、君主と同様に臣下に褒賞を与えて忠誠を維持する必要があります。

また、「離間(キャラの忠誠を下げる)」コマンドがあり、自国のキャラにも実行可能なので、智謀の高いキャラなら逆に自国を崩壊に追いやることもできるかもしれません。

ゲームの概要は以上です。

終わりに

前作「betrayer」のリリース(2024/6)から1年4ヶ月も経ってしまいました。「betrayer」は継続的に遊んでいただけているようで、11/3現在、閲覧数9,056、評価数8、コメント数6(作者返信3含む)となっていました。遊んでいただいた方々に御礼申し上げます。

「betrayer2」の開発過程も記事にまとめて投稿できればと思います。記憶の薄れないうちに、「betrayer」と併せて技術的トピックもまとめておきたいと思っています。

また、次は戦略ゲームはいったん置いておいて、「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のようなゲームを作ってみたいと思います(これも戦略ゲーム?)。何年先になるかは分かりません...。できれば来年に出せたらいいなと思います。

以上です。

『キャリアデザイン入門』Ⅰ・Ⅱ読書メモ

新年の気付けに読んだ。

この本で冒頭に示されている三十代頃までの「筏下り」とその後の「山登り」というキャリアモデルは、自分の身を振り返っても確かにその通りだなという内容がうまくまとめられていて、この部分を読めただけでもこの本を手に取った価値はあったなと思った。

Ⅰの基礎力編では、高校生あたりから40代ぐらいまでのキャリアの一般的な流れや知っておくべきことが解説されつつ、専門力を身に着けはじめていく年代である30代頃までに身に着けておくべき基礎力について解説されていた。

Ⅱの専門力編では、30代以降のこれから専門力を身に着けていこうとする人に向けて、専門力の身につけ方や持つべき意識について解説されていた。すでに専門力を身に着けてバリバリやっている人に対するアドバイスというよりは、まだどういう専門性を持とうか決めかねている人に対して、色々な方向性や取りうる手段をざっくりと紹介したものだった。

どちらの本も良い内容は多くありつつも、割とぼんやりとした感じの印象論や、やや雑に感じる放言めいた投げかけも多く(「◯◯してみてはどうだろう」とか「◯◯してみるのも面白い」とか)、そのあたりが若い人にどのくらい響くのだろうかとは思った。(まあ、つい視野の狭くなりがちなキャリアに対する考えについて、色んな考え方・方向性があるんだよというのを示すための発想の参考として挙げているだけであって、関西人が話の最後に「知らんけど」を付けるのと同じノリなのだろうなとは思う)

とはいえどの話も極論は避けて、多くの場合に従っておいて間違いはない基本的な考え方が解説されているので、あんまり響かないとしてもそれらの内容をしっかりと胸に留め置いて、基本を疎かにせず、しかしときには敢えて基本から逸れてみるというスタンスが大事だと思った。(この「敢えて」というのも重要なポイントだと思う。基本を知らないまま基本から逸れるのは形無しとはいうけど、まあそれで上手くいくこともある。大切なのは、上手くいかないことも多い人生のなかで、前もって知っていればそんな逸れ方しなかったのにという形のやらかし・頓死を防ぐことにあり、それがキャリアデザインを考えることの意義のひとつだと思う)

本の感想は以上。

個人的にはこういった概論・総論的な話も大事にしつつ、一方でより個別具体的な、偉人や尊敬できる人の話に触れるのもキャリアの大きな助けになると思う。

良きキャリアの形成、にかぎらず人生においては、どれだけ多くの本当に尊敬できる人と出会えて、影響を受けられたかも大事なポイントになると思う。それは何も実際に会って話した人である必要はなく、本を通して知った人物や、物語の中の人物でも構わない。

そういった素晴らしい人物に憧れを抱き模範とし私淑する。何かの決断のたびにあの人ならどう行動するだろうかと考え、あるいはやがてそんな考えが血肉と化していき、意識せずともその人と似通ったような行動になっていく。そういうことが、難しい選択を迫られ続ける人生のなかで、易きに流れることなく、自分が本当に大切にしたいことを大切にし、自分でも思ってもいなかったような高みにまで登っていくための助けになると思う。

というわけでここでそういう素晴らしい人物やら本やらでも挙げられたら良かったけど、今ぱっと思いつかなかったのでこれで終わる。

『脳のワーキングメモリを鍛える!』読書メモ

運動中に聴いていた。

前半あたりの章

とにかくワーキングメモリは色んな能力だけでなく、前向きな思考みたいなものにすら関わっているという感じだった。

運動の章

ワーキングメモリ回路?と小脳運動皮質ループがあって、動作を覚えるにはワーキングメモリ回路をすっ飛ばさないといけないあたりが印象に残った(適当)。

これは運動以外にも言えることだと思った。運動的なことであれ知的作業的なことであれ、何かを習得しようとするとき、頭がいっぱいいっぱいになるような難易度(=ワーキングメモリをフルに使わないといけないような難しさ)で取り組むのは却って覚えが悪い。ある程度は考えなくてもできるぐらいの塩梅の難易度が一番学習効率が高い気がする。

子供から老人までのワーキングメモリの変遷の章

子供の成績の予測はIQよりもワーキングメモリのほうが精度が高いという話が印象に残った。ほんとにそれワーキングメモリの研究か?というような話もあったけど、とにかくワーキングメモリは色んな能力を身につけるのに大事な感じだった。

最後のあたりの章

ワーキングメモリに良い習慣と、ワーキングメモリの大切さが意識された未来の社会について。最後は総まとめ的なアドバイス。最後以外はとても薄っぺらい内容だった。

訳者あとがき

最後の章は冗長な内容が長々とあったのでばっさり切った、他にも重複した内容がいくつもあったので切った、著者の一人が開発したと紹介しているメソッドについて調べたけど有料?会員限定だったのでよく分からなかった、みたいなことが書かれていて笑った。とても誠実で良い訳者あとがきだったと思う。

まとめ

話題が非常に幅広い分野に渡っていて、大筋として書かれている内容はどれも大切そうで良い感じの本ではあった。

ただところどころの話の展開が強引だったり、怪しい適当な内容があったりで不信感が募った。本当はそういう先入観はいったん脇に置いて、まっさらな感覚で読み進めるのが良いとは思いつつ、いったん胡散臭いなと思ってしまうとなかなか難しい。

良い内容も多いので、胡散臭いな、どうでもいいなと思うところは軽く飛ばしながらまた読み返したい。丁寧に読み返す必要はない。

小脳運動皮質ループ周りの話は、物事の習得について何らかの示唆を得られる良い内容だった。

『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』読書メモ

運動のお供に聴いていた。2013年出版の本。

第1講義 マッキンゼー流プロフェッショナルの流儀

仕事人として持つべきプロ意識について。どれも大事なことだけど、なによりも入社1年目からこういう考え方を叩き込まれて、なおかつ周りの同僚や上司もそんな人達ばっかりという環境なのが素晴らしいなと思った。

社内に強い人材が揃っているのもいい。資料の作り方について社内の達人にアドバイスを貰いに行ったとか、調査のプロからやり方を教えてもらったとか、さらっと書かれているけど地味にすごいことで、実際はそんな人材がいないとか、そんな有機的な連携体制がうまくできていないとかが多い。

第2講義 マッキンゼー流問題解決の基本プロセス

月並みで当たり前の話にも見えるけど、この地道な段取りをちゃんと実践するのはとても大切だと思った。問題の整理もせずに手当たり次第に取り組んでいくことがどれほど多いことか。また読み返したい。

また、あくまでツールやフレームワークに使われることはなく...、みたいな話もあってバランス感覚をきちんと押さえられていて良いと思った。

意外と感性やセンスが先にあって、それを誰もが納得できるロジックに落としていくという流れであることも多いというのもその通りだと思った。

少し話がずれる。ちょうどネットで論理的思考が話題になっていたけど、ある集団・社会のメンバーみんなが納得できるような話の筋立て、みたいなものが論理・ロジックだと思ううぐらいがちょうど良いと思う。論理という言葉について、論理学とかの流れで、なんらかの数学的・演繹的に求められる絶対の真理・定理みたいな印象を持ちがちだけど、それよりはもっと緩く、もっとふわっとした納得感、社会的な合意感、コモン・センスみたいなものが大事だと思う。

実社会の問題については、形式論理的な筋立てだけでは多くの納得は得られない。論理だけが先行して組み立てられた話が人の胸を打つことは少ない。(純粋な意味で)論理的であることと、説得力のあること・納得のいくことは必ずしもイコールではない。現代では論理的という言葉が「説得力のあること」の代名詞のように使われがちだけど、それ以外にも多くの理はある。それらの総体が説得力を成していて、その中での論理の重要性は社会や時代によっても変わってくる。

さらに余談だけど、大昔では呪術や怪力乱神の類いすら大きな説得力を持っていた。それらは今となっては顧みられることも少なく、時代遅れの無価値な迷信と切り捨てることもできるけど、むしろそこに人間の思考の変えがたい傾向や本質みたいなものも読み取れるように思う。それに、知識の蓄積に乏しく情報の穴だらけで不確実性の大きな世界では割合優れた意思決定の基準だったんじゃないかとも思う。そうでなければ古代にあれほど呪術や卜占に頼った勢力ばかりが栄えることもなかったはず。(ということを宮城谷昌光の古代中国の小説を読んでいるとよく思う)


あとの章はそんなには印象に残らなかった。良いことは書かれていて、それらを愚直に実践していける人間が強いんだろうなあとは思った。

ひとつ前に読んだ本が学生向けだったので、こういうバリバリのビジネスマン向けの本はプラクティカルで心が洗われた。

『馬上の星 小説・馬援伝』読書メモ

前半は妙な牧場物語が始まったかと思えば拠点を転々としたりと展開がせわしく、めぼしい人物も出てこなくて退屈な感じだった。

本の終盤になってようやく馬援の歴史上の活躍が描かれるようになった。ただ淡白な描写に留まっていた。

一通り読んでみて、単調で人物の掘り下げも少なく、それほどおもしろいものではなかった。大勢の人が登場したものの、それらの人がうまく活躍することもなく終わってしまった。

前漢末期~後漢初期という分かりにくい時代で、中央とは離れた地が舞台だったのも退屈さに拍車をかけていたかもしれない。『奇貨居くべし』のような絢爛さはなかった。ただ地味ではあるものの、平凡な人には到底真似できない立派な考えを貫き続ける馬援の(一見して分かりづらい)凄みみたいなものは伝わった。

忙しい連載スケジュールのなか強引に書き上げた感じかなと思った。売れた作家のこういう作品を見るのはやるせない。やっぱりもっとちゃんと人生を掛けて作られたような物語を見たいと思った。

ただ、やっぱり著者がところどころに散りばめた「とっておき」は良かった。そういうのはまた見返したい。

『知的複眼思考法』読書メモ

運動のお供に聴いていた。たまにいくつかの本で複眼思考がどうたらと出てくることがあり、おそらくこの本が源流だと思うので読んでみることにした。

序章 知的複眼思考法とは何か

1996年出版の本なので地獄のような古臭いステレオタイプの話がいくつも出てきた(そういうステレオタイプについて立ち止まって考えるよう促す文脈で)。今の時代にも、後から見たらありえないと思うような思考や常識や偏見(偏見とすら思っていない)が当たり前のように受け入れられているものもあるんだろうなあと思った。

第1章 創造的読書で思考力を鍛える

読書について。本に書かれた文章も、出版されるまでに色々書き直されたものであるという視点は確かに無かった。別の可能性があったこと、著者がどういう思いでその文章を選びとったのかを考えてみると良いとのこと。

第2章 考えるための作文技法

書くことで考えを深めていくことについて。本筋ではないけど書き出すことで考えをまとめるのはとても大事。たびたび出てくる地獄のようなステレオタイプに対するコメントがハラハラする。

全体的に、高校生から大学生ぐらい向けの内容な感じがしている。

第3章 問いの立てかたと展開のしかた―考える筋道としての問い

前半は、疑似相関を見分ける具体的な方法とか、ロジカルシンキングの基礎的な考え方とかの説明。やっぱり今となっては高校生・大学生1・2年生向けな内容な感じ。良く言えば基本的なことがしっかり解説されている。

後半は何気なく使っている概念の定義に意識的になることについて。基本的なことではあるけどそれをここまで丁寧に言語化しているのはとてもいいと思った。

残念ながらもうこの本が対象としている読者層には、この本に書かれている具体例はピンとこないものになっていそうだけど。(受験戦争、偏差値教育、男女差別、オウム真理教などなど)

第4章 複眼思考を身につける

前半は複眼思考を身につけるための方法論。着目する事柄そのものだけでなく関係論にも目を配る。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を例に逆説的に関係を見る。施策の思わぬ副産物について考える。色々な着眼点が説明されている。

後半は問題の「作られ方」・提起のされ方によって扱われ方も違ってくることについて。いじめと呼ぶか傷害と呼ぶかみたいな。いわゆるフレーミングについて自覚的になろうみたいな感じ。

まとめ

高校生・大学生向けに、色々な着眼点で物事をみることについて丁寧に言語化して解説した本という感じだった。

著者の専門分野(社会学・教育学)と時代性から、受験戦争や就職難や男女差別やその他昔のステレオタイプの話などを引き合いに出した多く、実社会や仕事や経済周りの話は薄めだった。そういう意味でもバリバリのビジネスマン向けというよりは学生向けな感じだった。

今となってはこのぐらい注意深い物の見方は当たり前じゃないかとつい思ってしまうものの、そんな見方をきちんと若い人に向けて解説してくれている本というのも少ないので、そういう意味で貴重な良い本だと思った。

とはいえ上でも書いたけど、今どきの学生にこの本で引き合いに出されていることがどのくらいピンとくるのかと思う。それほど時代が変わってしまったことが印象に残った。そして今、当たり前にある考え方で二十年後、三十年後に見返して古臭すぎると思われるような考えもまたたくさんあるんだろうなあと思った。

そういった、もっともらしいように見えても一時の流行り廃りでしかない考え方に惑わされずに、何千年と経っても変わらず朽ちないようなものを追い求めていきたいと思った。